2014年07月18日

高血圧治療薬(利尿薬)

●高血圧治療薬(利尿薬)

利尿薬

利尿薬(りにょうやく、英: diuretic)は、尿量を増加させる作用を持つ薬物の総称である。

尿は水分や電解質を体外へ排出する最も効果的な手段である。

尿は腎臓でつくられるが、腎臓は体内の状況に応じて尿の量や濃度を調節し、全身の体液を一定に保つよう制御している。

利尿薬は、この調節機構が適切にはたらかない病態などにおいて、水分を体外に排出するために用いられる。



●浸透圧利尿薬

浸透圧利尿薬は糸球体で濾過されると再吸収されないため、尿細管内の浸透圧が上昇し、水の再吸収が抑制される。脳圧亢進時などに用いられる。

D-マンニトール

濃グリセリン(グリセオール)


●ループ利尿薬

ヘンレのループにおいてNaとClの再吸収を阻害する。腎機能に悪影響を与えないため、利尿薬の第一選択として使用される。

また心不全、高血圧治療薬としても使用される。

フロセミド(ラシックス,オイテンシン, 後発品あり)

トラセミド (ルプラック)

アゾセミド(ダイアート、長時間作用型)

ピレタニド(アレリックス、作用時間はフロセミドに近い)




●サイアザイド系利尿薬

遠位尿細管においてNaとClの再吸収を阻害する。降圧剤としても使用される。

大規模臨床試験では他剤と遜色ない結果を得ており、現在も高血圧治療薬の代表的なもの。

ヒドロクロロサイアザイド(HCTZ,ダイクロトライド)

トリクロルメチアジド(フルイトラン)

インダパミド(ナトリックス)

クロルタリドン(ハイグロトン)



●K保持性利尿薬

抗アルドステロン薬とも。

遠位尿細管においてアルドステロン(抗利尿ホルモン)に拮抗し、Naの再吸収を阻害する一方、Kの尿中排泄を抑制する。

ループ利尿薬等と合わせて、肝硬変、うっ血性心不全などに対して使用される。

またセララは高血圧に対してしか日本では適応症はない。

トリアムテレン(トリテレン)

スピロノラクトン(アルダクトンA)

カンレノ酸カリウム(ソルダクトン注)

エプレレノン(セララ錠)



●その他の利尿薬

アセタゾラミド(ダイアモックス)は、緑内障やメニエール病に対して使用される。

塩酸ドパミン(イノバン)は、腎血流量を増やして間接的に利尿作用を示す。

アミノフィリン(ネオフィリン)や強心薬も利尿作用を示す。

カルペリチド(ハンプ)は心房性Na利尿ペプチド(ANP)と呼ばれ、重症心不全時の利尿薬として使用される。

トルバプタンは、世界初のバソプレシンV2-受容体拮抗剤。大塚製薬より「サムスカ錠 15mg」として2010年12月14日上市された。



●副作用

低カリウム血症・低ナトリウム血症

高尿酸血症

アロプリノール(ザイロリック)を服用するのではなく、利尿薬減量のうえ、ロサルタンやシルニジピン併用とするとよい。

ボクシング等の階級制の競技において、体重調整の最後の手段として利尿剤が使用されることがあるが、ドーピング検査においても利尿剤は禁止薬物として指定されていることが多い。

副作用も大きく、治療以外の目的で利尿剤を使用することは危険も伴うため、絶対にさけるべきである。



以上


ラベル:利尿薬
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2014年07月07日

アンジオテンシンについて

●アンジオテンシンについて

アンジオテンシン(angiotensin)とは、ポリペプチドの1種で、昇圧作用を持つ生理活性物質である。

なお、アンギオテンシンと呼ばれることもあるが、近年ではあまり用いられない



●アンジオテンシンの概説


アンジオテンシンにはI〜IVの4種が存在し、これらのうち、アンジオテンシンII〜IVは心臓の収縮力を高め、細動脈を収縮させることで血圧を上昇させる。

なお、アンジオテンシンIには血圧を上昇させる効果は無い。

アンジオテンシンの原料となるアンジオテンシノーゲンは肝臓で産生される他、肥大化した脂肪細胞からも産生・分泌される。

このアンジオテンシノーゲンは、腎臓の傍糸球体細胞から分泌されるタンパク質分解酵素であるレニンの作用によって、アミノ酸10残基から成るアンジオテンシンI が作り出される。

その後、これがアンジオテンシン変換酵素(ACE)、キマーゼ、カテプシンGの働きによってC末端の2残基が切り離され、アンジオテンシンII に変換される。

アンジオテンシンIIはACE2により、血管拡張作用と抗増殖作用を有するヘプタペプチドであるアンジオテンシン-(1-7)へと変換される。

アンジオテンシンI: Asp - Arg - Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - His - Leu - OH

アンジオテンシンII: Asp- Arg - Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - OH

アンジオテンシンIII: Arg - Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - OH

アンジオテンシンIV: Val - Tyr - Ile - His - Pro - Phe - OH


アンジオテンシンI は昇圧作用を有さず、アンジオテンシンII が最も強い活性を持つ。

(アンジオテンシンIII は II の4割程度の活性で、IV は更に低い)。


また、アンジオテンシンII は副腎に作用して、鉱質コルチコイドで血液におけるナトリウムとカリウムのバランスを制御するアルドステロンを分泌させる。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌させる。




●アンジオテンシンの作用機序

アンジオテンシンII は副腎皮質にある受容体に結合すると、副腎皮質からのアルドステロンの合成・分泌が促進される。

このアルドステロンの働きによって、腎集合管でのナトリウムの再吸収を促進し、これによって体液量が増加する事により、昇圧作用をもたらす。

また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し、水分の再吸収を促進することにより、昇圧作用をもたらす。



●降圧剤の標的として

アンジオテンシンII には血圧上昇作用があるため、これを作らせないか、またはその作用をブロックする化合物ができれば血圧降下剤として用いることができる。

前者、つまりアンジオテンシン変換酵素 (ACE) の働きを止めるタイプの薬剤を ACE阻害薬と呼ぶ。

またアンジオテンシンII の受容体に結合し、その作用をブロックするタイプの薬剤をアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (angiotensin receptor blocker, ARB) と言う。

いずれも臨床上重要な降圧剤として広く用いられている。

また近年、これらの前の段階である、レニンを阻害するタイプの降圧剤も登場している。


以上


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2014年07月03日

高血圧の治療薬の種類(6)

●高血圧の治療薬の種類(6)

●β受容体遮断薬

α受容体遮断薬と同じようにβ受容体遮断薬にも非選択的なものと選択的β1受容体遮断薬が存在する。

例えばプロプラノロールは非選択的なβ受容体遮断薬であるが、血管平滑筋の弛緩効果をもたらすβ2受容体を阻害することはむしろ血圧を上昇させる。

しかし、β1受容体阻害による心拍数・心拍出量の減少および腎臓傍糸球体細胞からのレニン放出抑制(血圧低下)とβ2受容体阻害による血圧上昇を比較した場合にβ1受容体の作用が優位であり、結果として血圧は低下する。

また、β2受容体は気管支拡張にも関与しており、β2受容体遮断により気道狭窄が引き起こされるため気管支喘息の患者に対しての使用は禁忌とされる。

それに対してβ1受容体選択的遮断薬はβ2受容体遮断作用を持たないことから比較的安全に使用することができる。



βブロッカーは他の降圧薬に比べて心血管系イベントの抑制効果は低く、高齢者、耐糖能障害者には第一選択とはならない。

しかし心臓のリモデリング作用があるために狭心症、心筋梗塞、頻脈性不整脈、大動脈解離、心不全を合併を合併する高血圧では良い適応となる。

併用療法ではサイアザイド系利尿薬との併用は代謝面で不利益があると考えられている。



添付文章上はβブロッカーは喘息、高度徐脈では使用禁忌、耐糖能障害、閉塞性肺疾患、末梢動脈疾患にて慎重投与となっている。

βブロッカーの使い分けのパラメータとしてはβ1選択性、内因性交感神経刺激作用(ISA)、α遮断作用、脂溶性、水溶性といったものがあげられる。

おもな使い分けとしては若年中年の狭心症を合併した高血圧の場合はβ1選択性のあるテノーミン(アテノロール)、メインテート(ビソプロロール)、アーチスト(カルベジロール)などが好まれる。高齢者で心拍数の低下が気になる場合はセレクトール(セリプロロール)などISAがあるものが好まれる。



脂質代謝など代謝面への副作用が気になる場合はαβ遮断薬であるアーチスト(カルベジロール)が好まれ、慢性腎臓病に対する治療にはセロケン(メトプロロール)、アーチスト(カルベジロール)が好まれる。




●α1β遮断薬

α受容体遮断薬においては血圧降下に伴いフィードバックとして生じる反射性頻脈が副作用として生じるという問題点があった。

しかし、α1β遮断薬は頻脈の原因となるβ1受容体も同時に阻害するため、副作用を未然に防止可能である。

カルベジロール(Carvedilol アーチストなど)


ラベタロール(Labetalol)

アロチノロール(Arotinolol)

ベバントロール(Bevantolol)


●α2受容体刺激薬

α2受容体はシナプス前膜に存在し、血圧の上昇に関与しているアドレナリンの放出を抑制的に制御している。

妊娠高血圧症候群に対して第一選択薬として用いられることもある。



以上

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2014年06月30日

高血圧の治療薬の種類(5)

●高血圧の治療薬の種類(5)


●直接的レニン阻害薬

レニンはアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIへの変換反応を触媒する酵素であり、血圧のコントロールに関与するレニン-アンジオテンシン系の上流に位置する。

直接的レニン阻害薬 (Direct Renin Inhibitor,DRI) であるアリスキレンはレニンのAsp32とAsp215の両残基に水素結合し、その活性を抑制することで降圧効果を示す十数年ぶりの新しいクラスの降圧薬である。

アリスキレンの降圧効果は持続的であり、単剤投与での24時間以上にわたって十分な降圧効果を示すとされており、ACE阻害作用を有していないためにキニン代謝による空咳などの副作用は生じにくいと考えられている。

アリスキレン(Aliskiren ラジレスなど)



●交感神経遮断薬

●交感神経の神経筋接合部にはアドレナリン受容体が存在している。

アドレナリン受容体は大きくα受容体とβ受容体に分けられ、α受容体は血管平滑筋の収縮を介して血圧上昇に働くα1受容体とシナプス前膜に存在して抑制的なフィードバック機構として働くα2受容体が存在する。

一方、β受容体にはβ1-3の三種類のサブタイプが存在し、β1受容体を介した心機能亢進作用やβ2受容体を介した血管平滑筋弛緩作用が血圧の制御において重要である。


●α受容体遮断薬

α受容体の遮断薬には非選択的にα受容体を遮断するものと選択的にα1受容体のみを遮断するものが存在する。

非選択的遮断薬であるトラゾリンおよびフェントラミンはα2受容体に対しても阻害作用を示すことから、α2受容体を介した抑制的フィードバックが外れ、シナプス前膜から神経伝達物質であるノルアドレナリンの放出が促進される。

このノルアドレナリンが循環血中を回り心臓などへ辿りつくとβ受容体の刺激を引き起こし、副作用の原因となる。

一方、α1受容体の選択的な遮断薬はα2受容体遮断作用を持たないことからこのような副次的な効果をもたらしにくい(副作用がないというわけではない)。

αブロッカーには心血管系の抑制効果が報告されていないため、高血圧治療薬の第一選択にはならない。

しかし脂質代謝やインスリン抵抗性を改善するため脂質異常症、メタボリックシンドロームを伴う高血圧では併用薬として用いられることが多い。

早朝の血圧上昇が心血管系イベントに関連し、その上昇に交感神経の亢進が関与するとされており早朝高血圧に対してドキサゾシン(カルデナリンなど)が使用されることが多い。

また前立腺肥大が合併している時も好まれる傾向がある。

カルデナリンの場合、アドビアランス不良の原因となるのが起立性低血圧の副作用である場合が多く、高齢者での使用では注意が必要である。

カルデナリンの維持量は1日1〜4mg(分1)であるが0.5mgから開始し、徐々に増量していく。

起立性低血圧は出現しても数日後に自然消失することも多いが、転倒のリスクがある患者では注意が必要である。 トラゾリン(Tolazoline)

フェントラミン(Phentolamine)

ドキサゾシン(Doxazosin カルデナリンなど)

プラゾシン(Prazosin ミニプレスなど)

ブナゾシン(Bunazosin デタントールなど)

テラゾシン(Terazosin)

ウラピジル(Urapidil)


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2014年06月25日

高血圧の治療薬の種類(5)

●高血圧の治療薬の種類(5)

●アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB)

上記の機構により産生されたアンジオテンシンIIはアンジオテンシン受容体を介してその作用を発現することが知られている。

アンジオテンシン受容体にはサブタイプが存在し、アンジオテンシン受容体拮抗薬(英: Angiotensin Receptor Blocker, ARB)の降圧作用はAT1受容体の遮断に基づく。

いずれも妊婦への適応は禁忌である。



ARBの標準薬はバルサルタン(Valsartan ディオバンなど) であり、世界で最も汎用され新薬開発時には、比較薬とされている。

ACE阻害薬やARBは輸出細動脈を拡張させ糸球体内圧を低下させ蛋白尿の減少を行う作用がある。

また、ARB各薬剤のクラスエフェクト以外の作用も注目されており、テルミサルタン(ミカルディスなど)のPPARγ活性化作用を介した糖・脂質代謝改善作用、ロサルタン(ニューロタンなど)の尿酸値低下作用等が挙げられる。

ARBは空咳のないACEIとほぼ同様なイメージがあったが、イルベサルタン(イルベタン、アバプロなど)は腎症に対して豊富なエビデンスがあり、心不全にACEI、腎不全にARBというイメージを定着させた。


ロサルタン(Losartan ニューロタンなど)

オルメサルタン(Olmesartan オルメテックなど)

テルミサルタン(Telmisartan ミカルディスなど)

バルサルタン(Valsartan ディオバンなど)

カンデサルタンシレキセチル(Candesartan Cilexetil ブロプレスなど)

イルベサルタン(Irbesartan イルベタン、アバプロなど)

アジルサルタン(Azilsartan アジルバなど)

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