2014年06月13日

高血圧の治療薬の種類(1)

●高血圧の治療薬の種類(1)

●利尿薬

利尿薬(利尿降圧薬)は尿量を増加させるための医薬品である。

そもそも尿とは血液中の不純物を除去するための機構であり、生体内で産生される老廃物は腎臓の糸球体で濾過されたのち尿中に排出される。

一方、尿は体外への水分排泄の役割も担っている。尿量が少なく循環血液量が多い状態では血圧が高くなるため、利尿薬による水分排泄は降圧効果を示す。

糸球体濾過を受けた血液由来の水分は尿細管へと移行する。

尿細管は糸球体に近い方から近位尿細管、ヘンレ係蹄(下行脚および上行脚)、遠位尿細管、集合管と呼ばれ、膀胱へと流れ込む。

糸球体濾過を受けた水分(原尿)の9割はこれらの尿細管壁から回収されることが知られている。

これを再吸収と呼び、再吸収を免れた水分のみが膀胱へと流れつき、尿として排泄される。

尿の再吸収はまず尿細管壁に存在するイオン交換体によってナトリウムイオン(Na+)の再吸収によって尿細管内外に浸透圧差が作られることにより始まる。

この浸透圧差を補正するためにNa+に付随して水も尿細管外へ移動することになり、結果として水分の再吸収が行われる。

現在発売されている利尿薬はこれらのイオン交換体の機能を調節することにより水分の再吸収を抑制し、尿量を増加させるものである。


●サイアザイド系利尿薬(チアジド系利尿薬)

サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管においてNa+およびCl-の再吸収を阻害する。

上記に示した通りチアジド系利尿薬はアメリカのガイドライン(JNC7)においてその使用が推奨されており、中程度の利尿作用を有する。

併用薬としての低用量のサイアザイド系利尿薬の使用は有効であるということがALLHAT試験で明らかになっている。(ただしALLHATで用いられたエビデンスのあるサイアザイド系利尿薬はクロルタリドン)この場合は利尿薬としての使用量よりも少ないことに注意が必要である。

サイアザイド系利尿薬は添付文章上は腎機能障害(Cr≧2.0)、低カリウム血症、痛風が認められる場合は使用禁忌であり、妊娠、耐糖能機能障害の場合は慎重投与ということになっている。

しかしこれは利尿薬として使用する場合であり、降圧薬としてサイアザイド系を用いる場合は利尿作用を期待する場合の1/4〜1/2量の併用となるため低カリウム血症、高尿酸血症、耐糖能障害といった不利益は最小限に抑えることができるとされている。

それでも障害が重度の場合はカリウム保持性利尿薬やロサルタン、シルニジピン、アロプリノールを併用する場合もある。

ただ、作用機序の問題からCr≧2.0で降圧効果、利尿効果ともに無効になってしまうことは変わりない。

低用量サイアザイド系利尿薬は短期的には循環血症量を減少させるが長期的には末梢血管抵抗を低下させることで降圧を行うと考えられている。

ADVANCE studyではACEとサイアザイド系利尿薬の併用薬と偽薬を比較しアドビアランスは同等であったため、利尿作用による不便さは長期的には問題とならないことが示唆されている。

代謝面の不利益から単純に高血圧治療を行うときにはβブロッカーとの併用は推奨されていない。

また腎障害時(Cr≧2.0)で利尿薬を使用する場合はループ利尿薬となるが、利尿作用が強い割に降圧作用は弱い傾向がある。

但し、うっ血性心不全が認められるときはうっ血の解除には有効であるためループ利尿薬を積極的に使用する。



プレミネントなどARBとサイアザイド系の利尿薬との合剤も販売されている トリクロルメチアジド(Trichlormethiazide フルイトランなど、一日1〜2mg)

ヒドロクロロチアジド(Hydrochlorothiazide ダイクロライドなど、一日12.5〜25mg)



●ループ利尿薬

ループ利尿薬は強力な利尿作用を有しているが、降圧作用はそれほど強くない。

ヘンレ係蹄上行脚においてNa+の再吸収に関与しているNa+/K+/2Cl-共輸送系を阻害する。

これにより尿細管内外の浸透圧差が緩和され、下行脚における水の再吸収が抑制される。

フロセミド(Furosemide,ラシックス)

トラセミド (Torasemide,ルプラック)

ブメタニド(Bumetanide)

エタクリン酸(Ethacrynic Acid)



●カリウム保持性利尿薬

多くの利尿薬はナトリウムの再吸収阻害と共にカリウムの排泄増加を引き起こし、低カリウム血症を副作用としてもつ。

カリウム保持性利尿薬は他の利尿薬とは逆にカリウムの補充を行うことができるため、併用することにより血中カリウム値の維持が可能となる。

カリウム保持性利尿薬であるスピロノラクトンはステロイドホルモンの一種であるアルドステロンと受容体との結合において拮抗し、Na+/K+交換系の活性化を抑制する。

一方、トリアムテレンは集合管においてNa+チャネルを活性化し、細胞内Na+量を増加させる。これによりNa+/K+交換系は抑制される。

カリウム保持性利尿薬はこれらの機序を介して利尿作用と血中K+増加作用を示す。


スピロノラクトン(Spironolactone,アルダクトンA)

トリアムテレン(Triamterene)

エプレレノン(Eplerenone,セララ)


(続く)

posted by ホーライ at 06:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 高血圧の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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