2014年06月08日

高血圧の分類

●本態性高血圧症

本態性高血圧(原発性高血圧) 原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝素因に加えて、生後の成長過程、加齢プロセスにおける食事、ストレスなどの様々な生活習慣がモザイクのように複雑に絡みあって生じる病態(モザイク説)。

高血圧患者の9割以上を占める。

食塩感受性高血圧は、遺伝的素因と食塩摂取過剰を兼ね持つもので、本態性高血圧の一部を占める。




●二次性高血圧

二次性高血圧 明らかな原因疾患があって生じる高血圧をいい、以下のような疾患が原因となる。

頻度は少ないが手術などによって完治する確率が高いのでその診断は重要である。

1.大動脈縮窄症 先天性疾患

2.腎血管性高血圧 腎動脈の狭窄があり、血流量の減った腎でレニンの分泌が亢進することで起きる。

3.腎実質性高血圧 腎糸球体の障害により起こる。

4.原発性アルドステロン症 (primary aldosteronism; PA) 副腎皮質の腫瘍からアルドステロンが過剰に分泌されるため起こる。

5.偽性アルドステロン症 グリチルリチン酸により、11-βHSD2活性が抑制され、コルチゾール代謝の阻害→コルチゾールの残存→ミネラルコルチコイド受容体刺激となる。

6.Apparent Mineralocorticoid Excess症候群(AME症候群) 11-βHSDの異常からおこる常染色体劣性遺伝疾患。

7.Liddle症候群 低カリウム血症、代謝性アルカローシスを来す常染色体優性の遺伝性高血圧症。Epethelial Sodium Channel; ENaCの異常から生じる。

8.クッシング症候群 副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されるため起こる。

9.褐色細胞腫 副腎髄質や神経節の腫瘍からアドレナリンまたはノルアドレナリンが過剰に分泌されるため起こる

10.大動脈炎症候群 膠原病の一つ。

11.甲状腺機能異常 甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症

12.妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症より改名)。

13.高カルシウム血症



この他、脳血管障害の急性期に著明な高血圧を来すことが知られている。脳出血では応急的な降圧が必要だが、脳梗塞では寧ろ脳血流を保てなくなる恐れがある為、降圧は行われない。




●高血圧の合併症

高血圧が持続すると強い圧力の血流が動脈の内膜にずり応力を加えると同時に血管内皮から血管収縮物質が分泌されることで、血管内皮が障害される。

この修復過程で粥腫(アテローム)が形成され、動脈硬化の原因となる。

慢性的疾患は大きく 「脳血管障害」、「心臓疾患」、「腎臓疾患」、「血管疾患」の4つに分類され、高血圧によって生じる動脈硬化の結果、以下のような合併症が発生する。



●脳血管障害

脳卒中

脳出血と脳梗塞およびクモ膜下出血に分類されるが、高血圧と関連が深いのは前2者である。

脳出血は高血圧ともっとも関連するが、最近は降圧薬治療がうまく行われるようになったため、その頻度は減少してきている。

一方、脳梗塞の頻度はむしろ増加し、その発症年齢も高齢化している。脳卒中の結果として片麻痺、失語症、認知症など寝たきりの原因となりやすい後遺症を残すため、社会的、経済的観点からも高血圧の予防はきわめて重要である。

脳卒中の発症を予測する上では、収縮期血圧(Systolic Blood Pressure;SBP)が性や人種に関係なく、脈圧・拡張期血圧 (Diastolic Blood Pressure;DBP) などと比べ、最も重要な因子であるという論文が American Journal of Hypertensionの2007年3月号に掲載された。

また日本人でも収縮期血圧のみが脳卒中および心筋梗塞の長期リスクの評価指標に適しているとの報告がなされた (Circulation. 2009;119:1892-1898)。




●心臓疾患

●虚血性心疾患

心筋梗塞や狭心症などの冠動脈の硬化によって心筋への血流が阻害されることで、心筋障害をきたす疾患群をいう。

高血圧が虚血性心疾患の重大な危険因子であることは間違いがないが、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、肥満などの関与も大きい。

最近は腹部内臓型肥満に合併した高血圧や高トリグリセライド血症、耐糖能異常などが冠動脈疾患のリスクであるとされ、メタボリック症候群として注目されている。

心肥大、心不全高血圧が持続すると心臓の仕事量が増えて、心筋が肥大してくる。

肥大した心筋はさらに高血圧の負荷によって拡張し、最終的には心不全に陥る。

また肥大した心筋では冠動脈からの血流も減少するために、虚血に陥りやすく、不整脈、虚血性心疾患の大きなリスクとなる。



●腎臓疾患

腎障害腎臓の糸球体は細動脈の束になったものであり、高血圧によって傷害される。

また、糸球体高血圧がレニン-アンギオテンシン系を賦活するためさらに血圧を上昇させる。

糸球体は廃絶すると再生しないため、糸球体障害は残存糸球体への負荷をさらに強めることとなる。

最終的には腎不全となり人工透析を受けなければならず、やはり社会的、経済的な負担は大きく、その進展予防は重要である。



●血管疾患

●動脈瘤

胸部や腹部の大動脈の壁の一部が動脈硬化性変化によって薄くなり、膨隆した状態を大動脈瘤という。

内径が5cm以上になると破裂する可能性が高くなるので、手術適応となる。

また血管壁の中膜が裂けて、裂け目に血流が入り込み、大血管が膨隆する状態を;解離性大動脈瘤 といい、生命を脅かす危険な状態である。


●閉塞性動脈硬化症

主に下肢の動脈が、動脈硬化によって著しく狭小化するか、あるいは完全に閉塞した状態をいう。

数十メートル歩くとふくらはぎが痛くなり、立ち止まると回復する場合には、この疾患を疑う。







●高血圧の診断

血圧は変動しやすいので、高血圧の診断は少なくとも2回以上の異なる機会における血圧測定値に基づいて行われるべきである。

最近は家庭血圧計が普及しているが、家庭で自分自身で測定した血圧値の方が、診察室で医師や看護師によって測定した血圧値よりも将来の脳卒中や心筋梗塞の予測に有用であるとする疫学調査結果が相次いで報告されている。

診察室での血圧測定では、白衣高血圧(医師による測定では本来の血圧より高くなる現象)や仮面高血圧(普段は高血圧なのに、診察室では正常血圧となる現象)が生じるため、必ずしも本来の血圧値を反映していないという考え方が普及している。


家庭での正常血圧値は診察室での血圧値よりもやや低いために、家庭血圧では135/80mmHg以上を高血圧とする。

家庭では朝食前に2回血圧を測定することが望ましい。心筋梗塞や脳卒中の発症は朝起床後に多発することから、早朝の高血圧管理が重要である。(早朝高血圧)

脳卒中や心筋梗塞の発症には高血圧のみならず、喫煙、高脂血症、糖尿病、肥満などの他の危険因子も関与するために、危険因子や合併症も考慮した高血圧の層別化によって将来の脳卒中、心筋梗塞の危険度の予測能が高まる。

動脈硬化の診断や、腎機能、血圧反射機能などの自律神経機能等の診断も病態の把握に重要であり、動脈硬化の定量診断には脈波伝播速度計測なども行われている。

血圧反射機能診断のためには、血圧変化に対する心拍反応や、動脈の血圧反射機能を診断する方法論も提案されている。

精密な病態の診断が最適な治療には不可欠である。




●高血圧の管理・治療

ガイドラインに定められた期間を食事療法や運動療法を行い、それでも140/90mmHgを超えている場合は降圧薬による薬物治療を開始する。

近年は大規模臨床試験がいくつも出そろい、高血圧治療指針(ガイドライン)では科学的根拠に基づいた降圧薬の選択を推奨している。



日本では依然として主治医の裁量ではあるが、その裁量を欧米の医療に即している医師と、上記のうちいくつかを改変した日本独自の考え方をもつ医師がいる(こちらのほうが多い)。


日本独自の考え方としては、

1.Ca受容体拮抗薬は副作用が少なく血圧を大きく下げるため、多くの場合で有用である。エビデンスが豊富で、危険因子として特に比重の高い脳出血は、同剤の開発前後で明らかに減少している。

虚血性心疾患においても、日本人では冠攣縮型狭心症の関与が大きく、Ca受容体拮抗薬が有効である。



2.降圧利尿薬は廉価であるが、耐糖能の悪化や尿酸値上昇、低カリウム血症といった副作用により、敬遠する医師が多かった。

しかし多くの臨床試験によってACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬などの最近の高価な降圧薬と同等か、それ以上の脳卒中、心筋梗塞予防、心不全改善、腎保護効果が明らかになっており、最近見直され処方する医師が増えている(例:インダパミドの項参照)。


3.日本の医療は国民皆保険でありコストを考える必要はあまりないため、たとえリスクの低い患者であっても最初から高価で切れ味の良いACE阻害薬やAII拮抗薬から始めても良いが、降圧利尿薬の選択をいつも考慮する。

posted by ホーライ at 07:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 高血圧の説明 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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