高血圧(こうけつあつ、Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。
高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症原因となるので臨床的には重大な状態である。
生活習慣病のひとつとされる。
高血圧というのは中年以降になってその状態になってしまってから対処する、といった発想で対応してよいものではなく、若いうちから生活習慣を改め、予防することのほうがはるかに大切で、それこそがもっとも有効な対策となるものである。
一般的に、若いうちから塩分を控えた食生活にすることや、たっぷり野菜をとることや、喫煙をしないことや、適度に運動を実行することが鍵となる。
本人の努力も必要なことは言うまでもないが、親や家族や地域の連携的な対策も鍵となる。
肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「死の四重奏」「syndrome X」「インスリン抵抗性症候群」などと称されていた。
これらは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。
●高血圧の定義(診断)
分類 収縮期血圧 拡張期血圧
至適血圧 <120 かつ <80
正常血圧 <130 かつ <85
正常高値血圧 130 - 139 または 85 - 89
T度(軽症)高血圧 140 - 159 または 90 - 99
U度(中等症)高血圧 160 - 179 または 100 - 109
V度(重症)高血圧 ≧180 または ≧110
収縮期高血圧 ≧140 かつ <90
すなわち、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90以上に保たれた状態が高血圧であるとされている。
しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いだけ合併症のリスクが高まるため、収縮期血圧で120未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされている。
ここで注意すべきは、血圧が高い状態が持続することが問題となるのであり、運動時や緊張した場合などの一過性の高血圧についての言及ではないということである。
高血圧の診断基準は数回の測定の平均値を対象としている。
運動や精神的な興奮で一過性に血圧が上がるのは生理的な反応であり、これは高血圧の概念とはまた違うものである。
血圧は1日の中でも変動している。
そのため、計測する時間帯には正常値の基準を満たしているものの、その他のほとんどの時間帯には高血圧となっている場合がある。
これを仮面高血圧と呼ぶ。また降圧剤が処方されている場合でも、その効果が切れている時間帯では安全域を外れている場合もある。
この点にも留意する必要がある。逆に、普段は正常血圧なのに診察室で医師が測定すると血圧が上昇して、高血圧と診断されてしまう場合もあり、“白衣高血圧”とよばれる。
糖尿病患者では起立性低血圧の症例が有るため、座位だけでなく臥位・立位でも測定する。
上腕の血圧測定結果で左右の血圧差が生じることがある。
血圧差は、上腕動脈或いは鎖骨下動脈の病変に起因すると考えられ、差が10mmHg以上の患者は心血管疾患による死亡リスクが有意に高い。
また、家庭で測定を行う場合は高い側の腕で測定を行うことが推奨されている。
日本高血圧学会によれば「家庭血圧測定条件設定の指針」で、
1.測定部位:上腕が推奨。手首、指血圧計の使用は避ける。
2.朝の場合は、起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前の安静時、座位1 - 2分後に測定。
3.夜の場合は就床前の安静時、座位1 - 2分後に測定。
4.朝夜の、任意の期間の平均値と標準偏差によって評価。
5.家庭血圧は135/85 mmHg以上は治療対象、125/75 mmHg未満を正常血圧。
などとしている。
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